株式会社ウェルネスは、クライアント個々にパーソナライズされた検査や健康行動を促す「パーソナルドクター」のサービスを提供する会社です。現役の医師や看護師がチャットによる相談で日常的に健康をサポート、病気を未然に防ぐためのさまざまなサービスを提供しています。今回は、京都大学医学部5年時からウェルネスのインターンシップに参画し、現在は医師(初期研修医)として臨床の一線に立つ宮脇里奈さんにインタビュー。医学生インターンとして得た数々の学びや経験を振り返っていただくとともに、現在の医師の仕事にどう活きたかというお話を語ってもらいました。
同期の友人のツイートを見て…
連絡した翌日にはインターンを決めていました(笑)
▼最初に、医師を志した理由から教えてもらえますか?
もともと漠然と医学に興味があって、高校は理系特化の医学サイエンスコースを専攻しました。その中でチーム医療を実践する授業があり、患者さんのバックグラウンドや実際の生活を考えながら、みんなでディスカッションして治療方針を決めていく過程が楽しくて、医師の仕事に就きたいと思うようになりました。また病気を診るだけでなく、患者さんの生活習慣を改善して病気を防ぐ“予防医療”に興味を持ったのも理由のひとつです。
▼予防医療に興味をもったのはなぜですか?
医学部の授業では、生理学や組織学など体の仕組みをはじめ、実際の臓器について臨床科目を学んでいくのですが、少しずつ違和感を覚えるようになりました。臨床実習のなかで、たとえば重度の糖尿病の患者さんをみたときなど、医師として最善の治療を行うことはもちろん重要ですが、「そもそも病気になることを防ぐことができれば、患者さんも苦しい思いをすることもないのに」と考えるようになったのです。
▼そこからウェルネスのインターンに参画したきっかけは何だったのですか?
自分なりに予防医療に関する勉強会などに参加していたのですが、たまたま私の同期の友人のX(旧ツイッター)で、「予防医療の会社がインターンを募集している」という投稿を見つけたのが最初でした。ちょうど5年生の10月でしたが、気になってその子に連絡してみると、すぐにウェルネス代表の中田さんにつないでくれて。翌日に面談をすることになり、気づいたらその日にインターンとして入っていました(笑)
▼すごいスピード感ですね。代表のどのような話に共感して決めたのですか?
オンラインで30分くらい話をしましたが、ウェルネスのビジョンなどはもちろんのこと、印象に残っているのは、「宮脇さんは何をやりたい?」って聞かれたことでした。すでにでき上がった仕事を与えられるよりも、自分たちで新しいことを創っていく、何も決まっていない未知の部分にトライしていく面白さを感じたのを覚えています。
私は予防医療のことをもっと知りたいと思っていましたし、ウェルネスには実際にどのようなクライアントさんがいて、どんな悩みにドクターがどう関わっているのかを見てみたいと思いました。予防医療という分野は大学の授業でも明確なカリキュラムとして入っているわけではありませんから、それにインターンとして少しでも触れられることができれば良いなと思って参画させていただくことにしました。
自分で時間を管理しながら
臨床実習の空き時間などを有効に使えた
▼インターンとして携わった主な業務について教えていただけますか?
私が参画した当初動いていたプロジェクトが、数ある論文から予防医療の知識を蓄積し、それをクライアントのサポートやアプリに反映していくというものでした。私たち医学生インターンが携わったのは、数ある論文をディスカッションしながら精査し、エビデンスがしっかりある、かつウェルネスのクライアント層に対して有意義だと考えられる情報を集める作業。脂質異常症や高血圧、糖尿病、心臓病や脳卒中、がんなど多くの疾患について、インターン生みんなで協力して論文を読み、当時で100以上のサマリーをつくりあげました。
ウェルネスではクライアントの生活習慣に合わせてパーソナルドクターが改善点などをアドバイスしていくわけですが、常にエビデンスに基づいた正しい知識や情報を提供することを重視しています。そうしたスタンスを大事にしている点にも興味を惹かれましたね。
▼インターンと学業との両立は大変ではありませんでしたか?
とても働きやすくて、大変と感じることはほとんどありませんでしたよ。インターンは5年生の10月から卒業までの約1年半やらせていただきましたが、リモート環境で自身が時間管理をしながら、臨床実習の合間の空き時間などを有効に使えましたし、いつでも好きなときに稼働できるので無理なく働くことができました。
▼インターンとして感じていたやりがいなどはどのような点ですか?
実際に自分たちが調べたことがパーソナルドクターに届き、クライアントさんに伝わっていくことを実感できるのは嬉しかったですね。論文を精査してウェルネス独自の予防プランを作成していくなかで、実際にクライアント向けのアプリに反映されたときには、頑張って良かったと達成感がありました。
そのほかにも大きかったと思うのは、医療ベンチャーという組織において、さまざまな立場の人たちとプロジェクトを進めていく経験ができた点です。医師や開発サイドの方などたくさんの人が介在して、意見を出し合いながらサービスを形にしていく。ベンチャー企業という刺激的な世界でビジネスの実際を知ることができたのは、医学部では経験できない貴重な学びになったと思います。
▼インターンを経験して、得るものが大きかったということですね。たとえばご自身の中で生まれた変化などはありますか?
たとえば、「この仕組みはもっと良くならないだろうか?」「もっとこうしたら良いのでは?」といった疑問や問題提起のマインドを持てるようになったかなと思います。ウェルネスの理念として、常にゼロベースで物事を考え、変化や改善を促す思考を大事にする風土があります。医療界にとってもいっそう必要になる考え方だと思いますし、そうした意識を持てるようになったのはウェルネスでのインターンを経験したおかげかなと思いますね。
インターンが自ら考えチャレンジして
新しいことを生み出していく風土がある
▼いま医師になって、インターンとして学んだことが活きていると思う点は何がありますか?
私は医師としてはまだまだこれからですが、きっと役に立つだろうなと感じる部分は、患者さんと同じ目線を持つことの大切さを学べた点でしょうか。たとえば予防プランを作成する際にも、難しい医療用語を使うのではなく、読む人に伝わりやすいような書き方で、正しいことを噛み砕いて書くことはいつも意識していました。今後患者さんに病態や治療法などを説明するときにきっと活きてくるのではないかと思っています。
▼ウェルネスのサービスがもたらす社会的意義や可能性について、医師として期待する部分について教えてください。
自分自身の健康や体の状態に、より多くの人が興味を持つようになってもらうための役割を担ってもらいたいですし、きっとそうなれると思います。私はまだ初期研修医1年目ですが、患者さん自身が自分の体のことを深く理解して、その上で治療を進めていくことの大切さをひしひしと感じています。それが当たり前の世の中になっていけば、もっとたくさんの人が健康を実感できるようになっていくと思いますから。
▼最後にインターンシップを考えている医学生の皆さんにメッセージをいただけますか?
いまインターンを募集している医療系のベンチャーは多くありますが、中でもインターン自身の裁量が大きく、自分たちが主体となって様々なことを進められるのがウェルネスだと思います。
医学生のときには授業はもちろん、部活やバイトだって、基本的には先輩たちがやっていることを同じように踏襲するのが普通ですが、ウェルネスの場合はインターンが自ら考え、自分たちでチャレンジして新しいことを生み出していく風土があります。大学の医学部では経験できないことだと感じましたし、私も5年生からの1年半の経験で大きな収穫がありましたから、いつからでもいいのでぜひトライしてみてほしいですね。
▼今もインターンOB同士のつながりなどはあるのですか?
基本的にはオンラインベースでしたが、インターンが参加する合宿もいくつかあり、リアルなコミュニケーションが深まりました。今もインターンで知り合ったひとつ下の後輩が私の病院に就活の見学に来てくれたり、同じく研修医をやっている同期と会ったり、仲良くしている子はたくさんますね。大学医学部以外の貴重なつながりがつくれたのも、大きな財産のひとつになったと感じています。